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何度か言ってみるも、和明は曖昧な返事ばかりだった。
業を煮やした瑞希が、両家の顔合わせを段取りして、それから結婚へ向かって歩みだしたんだけど。
どれだけ記憶を遡っても、和明が首を縦に振っていたところを、瑞希は思い出せなかった。
(……あ、私……)
指先が、だんだんと冷たくなっていく。
思い出せる和明との会話は、すべて結婚についての義務的な話か、仕事関連の話だけ。
ほかに覚えているのは――――。
『……瑞希って、なんで結婚したいの?
仕事一筋なんだし、ひとりで生きていけるじゃん』
呆れたような和明の呟きが、瑞希の脳裏に甦った。
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