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「……美月さん、映画観ない?」
視線を先にしたまま尋ねると、『美月』は「え?」と浩二を見上げた。
唖然とした顔が、視界の端に映る。
(……そんな顔をされても、無理ないか)
さっき話していたのと全く無関係だし、当然といえば当然だろう。
けど浩二だって、考えなしに言ったわけじゃない。
『美月』がいろいろと吐き出しているのは、ふたりのやりとりを終えるつもりだからとわかってる。
だけど浩二は、『美月』とここで終わるつもりはない。
駅まではあと数分。
心を軽くするような言葉は、まだ思いつかない。
けどこのまま別れれば、ひとりになった時、『美月』がどんな気持ちになるのかわかっている。
そこで思いついたのが、映画だった。
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