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浩二は半年前、ここで映画を見た。
健吾に、美月のことを言い当てられた時だった。
ひとりでいれば、嫌でも美月たちのことを思い出してしまう。
だから浩二は、せめてもの気晴らしに、仕事終わりに映画館に足を運んだ。
滑り込んだ最終上映は、普段観ないホームドラマだった。
それを観て、浩二はひどく感動したわけでもないし、ひどく悲しかったわけでもない。
だけど、ほんのわずかに、涙が零れた。
泣くのをずっと堪えていたから、濁った心がすこし流れたような気がした。
『美月』も、その時の浩二と同じようにいくかはわからない。
けど、ここでひとりにさせるよりかは、だれか隣にいたほうがましだろう。
「ちょっと待ってください、なんで映画……」
「久々に観たくなったんだ。
美月さんの好きなやつでいいから、付き合ってよ」
声を荒げる『美月』を置いて、浩二はポスターの傍に近付いた。
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