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なにそれ、なんなのと、思った。
『付き合ってることが苦しかった』なんて、曖昧な理由に納得できるわけがない。
感情ばかりが膨れ上がり、かわりに思考はどんどんと下がった。
和明は、話は済んだとばかりに席を立ち、瑞希は咄嗟に『待って』と言おうとした。
そんな一方的な別れなんて納得できない。
なにより、こんな短い会話であっけなく終わるなんて、ありえない。
そう思うのに、精神的なダメージは相当だったようで、体中の血が凍りついたように、体の震えが止まらない。
口を開くことすらかなわない瑞希を置いて、和明は「じゃあ」と喫茶店を後にした。
震え続ける瑞希は、足にも力が入らず動けない。
だから、遠ざかる背中から目を逸らせずに、馬鹿みたいに見送るしかなかった。
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