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いつから泣いていたんだろう。
映画に見入っていたから、浩二は全然気付かなかった。
ストーリーで泣けるようなところはなかったから、映画を観て泣いたとは思えない。
(なにか、思い出したのか……)
浩二はシートに座り直すと、なにも言わずに自分の膝を見つめた。
浩二たちの前を、隣に座っていた人が通り過ぎていく。
少し慌てたけど、出口は後ろだから、それ以上前を通る人はいなかった。
場内のざわめきが、次第に遠くなっていく。
靴音も聞こえなくなった時、ふと半年前のことを思い出した。
映画を観た後、浩二は感情が入り混じって、しばらくその場から動けなかった。
ようやく立ち上がった時、浩二のほかに、その場に残っていた人がひとりだけいた。
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