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映画館を出ると、街には夜の帳が降りていた。
瑞希は足元の薄い影を見つめながら、駅へと歩き出す。
ミヤサカは、あれから一言も話さない。
ただ黙って隣にいるだけだ。
ひとりにしてと思う反面、本当にひとりになると、どうしようもない孤独が襲ってきそうで、瑞希はなにも言えなかった。
二度もあの映画館で泣いてしまったけど、映画に感動したからじゃない。
まだ和明と別れる前、スケールアウトが映画化すると決まった時のこと。
和明が珍しく観たいと言った。
好きな小説が原作らしく、話を聞いているうちに瑞希も興味が沸いた。
公開したら、一緒に観ようと約束をした。
だけどその約束は、別れたと同時に自然と流れた。
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