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ようやく瑞希が自分のおかれた状況を理解した時には、とっぷり日が暮れていた。
そこからのろのろと喫茶店を後にし、アパートに戻った。
瑞希が玄関のドアを開けたと同時に、和明が忘れた傘が視界に入り込んだ。
その時、悲しいのか悔しいのかわからない涙が、ぽろりと零れた。
瑞希は強く目を擦り、スマホを取り出して和明に電話をかけた。
けど、繋がらなかった。
もう一度電話をしてみると、発信音の途中で音が切れ、そこからは音すらならなくなった。
目の前には、明かりのない真っ暗な部屋がある。
まるで絶望を表しているようなその部屋で、一人泣くなんて惨めすぎる。
瑞希はくるりと背を向けて、部屋を飛び出した。
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