6/38
前へ
/399ページ
次へ
渋谷駅前の交差点で足を止める。 ここを渡れば、ミヤサカとはもう会うこともないだろう。 なぜか心の隅がちくっとして、瑞希は通り過ぎる車を見つめながら、そのわけを探した。 しばらくして、その答えを見つけた。 やっぱりミヤサカに、泣いたわけを尋ねて欲しかったんだと。 そうすれば思い出してしまった和明の話をして、苦しさを吐き出せる。 それが出来なかったから、不完全燃焼なんだ。 (……きっとそう、そうよ) よぎる違和感をねじ伏せて、瑞希は隣を見やった。 街の明かりに照らされた、端正な横顔が瞳に映る。 ただ隣にいるだけで、何度も女子たちの羨望を感じた。 瑞希がもしこの人と結婚するとわかったら、和明だって『負けた』と思うかもしれない。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4688人が本棚に入れています
本棚に追加