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渋谷駅前の交差点で足を止める。
ここを渡れば、ミヤサカとはもう会うこともないだろう。
なぜか心の隅がちくっとして、瑞希は通り過ぎる車を見つめながら、そのわけを探した。
しばらくして、その答えを見つけた。
やっぱりミヤサカに、泣いたわけを尋ねて欲しかったんだと。
そうすれば思い出してしまった和明の話をして、苦しさを吐き出せる。
それが出来なかったから、不完全燃焼なんだ。
(……きっとそう、そうよ)
よぎる違和感をねじ伏せて、瑞希は隣を見やった。
街の明かりに照らされた、端正な横顔が瞳に映る。
ただ隣にいるだけで、何度も女子たちの羨望を感じた。
瑞希がもしこの人と結婚するとわかったら、和明だって『負けた』と思うかもしれない。
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