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信号が変わり、前へ踏み出した。 駅の改札で別れたくなかった。 見送られるのも、見送るのも嫌だった。 交差点を渡り切ったところで、瑞希はまるで今思いついたように、「そうだ」と切り出した。 「私、買いたいものがあったんで、ここで別れますね。 今日はありがとうございました」 人の邪魔にならないような場所で立ち止まり、つくった笑みを向ける。 「じゃあ」と背を向けようとした時、「美月さん」と名を呼ばれた。 「……なんですか?」 すがすがしいくらいの微笑みを返せば、彼は一瞬口籠った。 困っているような、探るような目で、瑞希を見ていた。
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