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和明とは同じフロアだから、会社ですれ違うこともあった。
瑞希には悔しいくらい普段通りに思えた。
だから自分だけがダメージを受けていると思われたくなくて、無視したり、泣き付いたりしたら惨めだと、挨拶だけは交わした。
和明も同じように接して、表面上は互いのことが風化し始めたようにみえた。
それから数か月が経った時、和明に経理の新人社員と付き合ってるという噂が流れた。
瑞希は頭を殴られたような衝撃に襲われた。
瑞希との関係をあれだけ公表したがらなかった和明と、入社したての女と噂なんて、信じられなかった。
デマだと自分に言い聞かせても、噂は一向に治まらない。
そうしてふたりの交際が社内で周知の事実にかわる頃、瑞希はようやくわかった。
公表したがらなかった理由は、和明にとって瑞希は、その程度の女でしかなかっただけだと。
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