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「……ありがとう」
言葉を遮られ、目と目が合った瞬間、ミヤサカの顔にふっと笑みが浮かんだ。
街灯の光がそうさせるのか、それはあまりにも儚い微笑みだった。
(……なんでそんな顔をするの……)
夜の路地を背に、彼の瞳がひどく澄んでいる。
そこにあるのは喜びよりも切なさで、瑞希の胸が締め付けられた。
なにも言えずにいると、ミヤサカは表情を変えずに言った。
「ひとつお願いがあるんだけど」
「え……?」
「……抱きしめてもいい?」
涼やかな風と共に、静かな問いがふたりの間を通り抜けた。
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