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それは瑞希にとって、普段なら受け入れるはずのない願いだった。
ササハラに肩を触られただけで突き飛ばしそうになったんだから、いくら交際を了承したとはいえ、あまりにも性急すぎる。
論外だと思うのに、ミヤサカがあまりにも悲しい目をしているから、瑞希の頭に断る選択肢が浮かばない。
(どうしてよ……)
交際を申し込んで、抱きしめたいと願いながら、彼がひどく傷ついた顔をしているのは。
強張ったままかすかに頷くと、ミヤサカは柔い微笑みを浮かべて、瑞希の腕を引いた。
自分とは別のぬくもりに包まれると、彼は消えそうな声で「美月」と言った。
吐息まじりに落ちた声は、至近距離にいるはずなのに、瑞希にはひどく遠い響きだった。
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