9/69
前へ
/399ページ
次へ
振り返ると、そこに辻が立っていた。 「……あぁ、辻さんお疲れ」 和明は戸惑った顔で返事をした。 辻は瑞希に小さく会釈すると、和明に向き直る。 「飯田さん、少しだけ話があるんですけど、いいですか?」 「え、あぁ……」 和明はばつが悪そうな顔で、瑞希を横目に見た。 その視線が居心地悪くて、瑞希は軽く頭を下げ、急いでその場を離れた。 (なんなのよ、一体) 公式彼女のおでましに、逃げるように退散してしまった自分が悔しい。 辻は控えめで大人しそうなのに、声をかけてくるなんて驚いた。 和明とべつの女が一緒にいるのが、そんなに耐えられなかったんだろうか。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4688人が本棚に入れています
本棚に追加