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浩二がパソコンの電源を落としたのは、日付が変わるぎりぎりの時刻だった。
目頭を押さえて、大きくため息をつく。
こうして襲ってくる山場を幾度も乗り切って、毎日をつないでいるけれど、いつかだれかが倒れるんじゃないかと、たまに思う。
「つ、疲れた……」
隣の原田の気の抜けた声を聞きながら、浩二は椅子から身を起こし、帰る支度を始めた。
「帰ろうぜ、もう明日は残りたくない」
原田の悲痛な呟きに、向いの河合が椅子から立ち上がりながら言った。
「何言ってんだよ。
明日は定時にあがらなきゃいけないから、今日こうなったんじゃん」
「あー、そうだった。忘れてた」
明日というのは、うちの会社の創立記念日のことだ。
その日は全社員が定時で帰る決まりになっている。
けど、前倒しで仕事をしないといけないから、それが嬉しいかと聞かれたらなんとも言えないけれど。
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