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浩二は内心ため息をついた。
原田は鋭いわけじゃなく、たぶん思考回路が女にしか直結していない。
「そんなこと勘ぐってないで、仕事しろ、仕事」
「はぁっ? 否定しないってことはそうなのかよ!
くっそ、お前ばっかりいい思いしやがって……
ハゲろっ、バーカ」
不当な罵声を浴びつつも、浩二は原田を無視して、キーボードを打ち続けた。
それから少しして、定時を迎えた。
システム部に緊張の糸が途切れたような、けだるい空気が流れる。
各々が帰る支度を始め、浩二もきりがいいところでパソコンの電源を落とし、席を立った。
システム部の社員が一斉に帰るなんて、この日以外にない。
人がどんどんオフィスから消える様子が、不思議な光景に思えた。
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