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「それはどうも……。 けど元彼には我慢ばかりさせたと思いましたし、そうやって言われても仕方なかったって、今なら思いますけどね」 「そうやって反省してるところも、えらいと思うよ」 指摘されたことを消化して、納得することはとても難しいけれど、瑞希はちゃんと受け止めて前を向いている。 彼女は強い人だと思った。 「……もう、わかりましたよ。 お褒めいただき光栄です、ありがとうございます。 ―――それで、宮坂さんはなに飲むんですか? ビールですか?」 瑞希は赤い顔のまま、茶化して話を変えようとする。 その様子がやけに微笑ましかった。 これが美月だったなら、花のように笑って「ありがとう」と微笑むだろう。 だけど、こんな瑞希の態度も嫌じゃない。 美月とそっくりの美月じゃない女を、初めて浩二はかわいいと思った。
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