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目の前の瑞希は、「結局なににするんですか」と居心地悪そうに注文を急かしている。 笑いながら視線を外した浩二の目に、店員がモヒートを運んでいるのが見えた。 こういう時、他人が注文しているものを見て、同じものを頼みたくなるのはどうしてだろう。 「ビールはやめて、次はモヒートにするよ」 「……モヒート?」 瑞希は口の中で繰り返すと、ドリンクメニューに目を落とした。 彼女は甘いカクテルが好きみたいだし、もしかして知らないのかもしれない。 「ミントとライムが入ってるやつだけど、飲んだことない?」 瑞希は「失礼な」と言わんばかりの顔をした。 「ありますよ。私もそれにします」 店員を呼び、モヒートふたつを頼んだ瑞希は、おもむろに浩二に尋ねた。
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