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(どうしてここに……)
そう思った瞬間、その疑問はもうひとりの自分に打ち消された。
今日は全社員が定時であがっているし、ここは会社に近い居酒屋だ。
今日は社員のだれがいても不思議じゃない。
だから和明がここにいても、なんら不思議はなかった。
「俺はビールにするけど、瑞希さんは?
………瑞希さん?」
メニューから顔をあげた彼が、瑞希の表情の変化に気付いた。
「どうかした?」
「元彼が……」
「え?」
「私の真後ろの席に……元彼がいるみたいなんです」
発した声はわずかに震えていた。
ミヤサカは目を瞠り、瑞希越しに仕切りへ目を向けた。
「……本当なの?」
和明の声を聞き間違うはずがない。
瑞希は唇を噛んで頷いた。
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