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(落ち着け、落ち着け……) 効き目はなくとも、瑞希は何度も心の中で繰り返した。 この状況は単に後ろに和明がいるというだけで、たいしたことない。 暗示のように言い聞かせたけれど、効果のほどはなかった ミヤサカも瑞希を窺うように見つめているだけで、なにも言わない。 お互いが無言になったせいで、まわりのざわめきがさらに大きく聞こえた。 「言っただろ。元カノは今の彼女とは全然違うタイプだって。 仕事バリバリの女王様タイプだったんだよ」 和明の声が、仕切りを難なくすり抜ける。 和明がいるというだけで動揺しているのに、だれの話をしているかわかった途端、心臓が大きな音をたてた。
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