56/69
前へ
/399ページ
次へ
こんな状況になっても、仕事はしっかりしてくれと言いたいのだろうか。 無表情の仮面がはがれかけたけど、なんとか持ちこたえて頷いた時、「瑞希」と後ろで声がした。 振り返ると、目を細めて笑うミヤサカが立っていた。 一見穏やかそうな笑顔なのに、彼の目は笑っていなかった。 住井は瑞希の連れを見て、ひどく呆けた顔をしている。 やや間があって、住井は慌てたように頭を下げた。 「ごめん、接待中だったんだ。 すみません、私たち芹澤さんと同じ会社のもので……」 住井なりにミヤサカがだれかと考えた結果、取引先の人という結論に達したらしい。 彼は瑞希を名前で呼んだからその見解はおかしいけど、誤解してるならそれでいい。 なんでもいいから、一刻も早くこの場を離れたかった。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4688人が本棚に入れています
本棚に追加