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ミヤサカは和明に送っていた視線を瑞希に移した。
彼は穏やかに微笑み、その顔のまま和明のほうを向く。
「……瑞希は、俺には勿体ないくらいの人です」
彼は否定も肯定もしなかったけれど、和明と住井は言葉を失った。
ミヤサカはそれだけを言い残すと、立ちすくむ瑞希を連れてこの場を離れた。
午後9時半。
駅に続く路地は活気に満ちていた。
エレベーターを降りたと同時に、タクシーのランプが目にちらつく。
ミヤサカは雑踏の端で足を止め、後ろの瑞希を振り返った。
『……瑞希は、俺には勿体ないくらいの人です』
ミヤサカの声が頭の中に響く。
彼があんなことを言ったのは、自分を庇ってだとわかっている。
瑞希は心配そうな目を見返すことが出来ずに、視線を遠くへやった。
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