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瑞希は息を詰めた。 夜風がまた目にしみたけど、今度は瞬きすることも出来なかった。 (なによ、なに言っちゃってるのよ……) 心臓の音がものすごくうるさい。 それは和明のせいじゃなく、今はミヤサカのせいだ。 どうやら彼は本物の慈善体質だったらしい。 瑞希は『彼女』だし、あんな現場に居合わせてしまったから放っておけないんだろう。 彼の瞳はまったく揺るがない。 それを見ているうちに頭が冴えて、だんだんムカムカしてきた。 もういい。 なんでも言えと言ったのだから、お望み通りにしてやろうじゃないか。 だいたい、端正な顔をしてる自覚もないくせに、サラッとそんなことを言うほうが反則なんだ。
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