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遠くでちらつく明かりを見ているうちに、食堂で見かけた儚げな辻の姿が頭に浮かんだ。
「……今の彼女は可愛いくてよかったわね。
新しい女ができたら、3年付き合った昔の女なんてどうでもいいってわけね。
……あんな蔑んだ言い方するほど、私のことはどうでも……」
遠くでだれかの笑い声がした。
今の瑞希にはそれすらも気に障って、奥歯を噛みしめた。
うまく制御できない憤りがくすぶって、体のいたるところがおかしくなりそうだった。
「……わかってるわよ。家庭的じゃなかったし、女として魅力がなかったのもわかってる。
だけど、だからって仕事ひとすじに生きたいなんて、一度でも言ったことがあった?
結婚したいと思ってなにが悪いの。
……あの時、私は……」
和明の気持ちに立って結婚を進めていたわけじゃない。
それでも、結婚するなら彼だと、本気で思っていたのに。
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