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「あんな台詞って?」 ほら。こうして尋ねてくるあたり、自覚がない証拠だ。 瑞希はわずかに躊躇ったけど、なるべく抑揚のない声で言った。 「私のこと、勿体ない人だなんて……。 庇ってくれたのはわかっていますけど、心にもないこと言わないでください」 彼はしばらくして、「あぁ」と思い出したように笑った。 「心にもないことなら言わないよ。 本当にそう思ってるから言ったんだけど」 「……やめてくださいよ。口ばっかりうまいんだから」 彼はこういったところが困る。 しっかり注意しておかなければと口を開こうとした時、ミヤサカが続けた。 「嘘じゃないって。 瑞希さんは疑い深すぎ。本当に俺なんかには勿体ない人だと思ってるよ。 だけどこんな俺でも……どうしても君じゃなきゃだめだから」
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