4687人が本棚に入れています
本棚に追加
咄嗟に顔を上げると、苦笑するミヤサカと視線が重なった。
彼の目は奥が覗けないほど深い。
どうしてそんな目をしているのか、瑞希には理由がわからなかった。
彼の瞳を見返せずに俯いた。
いつの間にか心に吹き荒れていた嵐は遠ざかって、ほとんどの感情は流された。
だけど流れ切らなかったものもある。
どうして悲しみは、最後まで残ってしまうんだろう。
「……あーあ……。
結婚、しようと思ってたのにな……」
ぽつりと呟いた言葉は、ミヤサカが腕に力を込めたと同時にかき消された。
目の端が熱くなる。だけどもう涙は湧いてこなかった。
大丈夫、明日からまた頑張れる。
和明を思って心を暗くするのは、本当にこれで最後。
瑞希は大きく息を吸うと、脳裏に浮かぶ思い出たちに、さよならを告げた。
最初のコメントを投稿しよう!