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(これ食べたら頑張らないと……) 両手に下がったコンビニ袋に目を向けた時、ポケットの中が震えた。 原田か河合からだろうとスマホを見れば、意外にも着信の相手は瑞希だった。 「……もしもし」 「もしもし、お疲れさまです。 さっきは電話に出られなくてごめんなさい。宮坂さんはお仕事終わったんですか?」 「いや、今日も残業だから、コンビニに買い出しに来てる。 瑞希さんは今帰り?」 急いで電話をとったから、片手にまとめた弁当が斜めになってしまった。 それを気にしつつ答えると、瑞希は「いえ」と短く否定した。 「まだ仕事が残ってるんですけど、ちょっと休憩しようかと思って」 「そっか、大変だね」 オフィス街の路地は暗いけれど、上を見上げればどこもかしこも電気がついている。 人のことは言えないけど、だれもかれもが残業しすぎだ。
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