4687人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺は瑞希さんじゃなきゃだめだって言ってるじゃん。
そんなの思うはずないって」
瑞希はまたしばらく黙った。
沈黙が満ちてきた頃、「そうですか」と弱い声が聞こえた。
瑞希は本心を見せて、交際を続けるかの判断をゆだねようとしたんだろう。
けど、浩二の意志は揺るがない。
「……あぁ、もういい時間ですね」
ふいに届いた一言に顔をあげると、瑞希は普段通りの声に戻っていた。
「忙しいのに話し込んじゃってごめんなさい。
まだ外ですか? 遅くなっちゃいましたよね」
電話の向こうで物音がした。
あちらも歩き出したのかもしれない。
「大丈夫だよ。
けど、瑞希さんももう戻らないとだよね。頑張って」
「はい、宮坂さんも。また連絡します」
通話が切れようとした瞬間、浩二は「あ」と、彼女を呼び止めた。
最初のコメントを投稿しよう!