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「瑞希さん」
「……なんですか?」
自然さを装いつつも、彼女の声がわずかにこわばっていた。
浩二は短く息を吸うと、できるだけ穏やかに言った。
「俺は瑞希さんが俺を選んでくれた理由なんて、なんでもかまわない。
さっきのこと……正直に話してくれてありがとう」
瑞希はすぐに返事をしなかった。
少し間を置いて、平静で細い声が聞こえた。
「……本当に、宮坂さんは変わり者ですね。
じゃ、お仕事頑張ってください」
今度こそ通話が切れ、浩二はスマホを耳から外した。
コンビニの袋ががさりと音を立てる。
「騙してる……か」
ぽつりと呟いた声が、しんとした路地に消えた。
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