4687人が本棚に入れています
本棚に追加
明かりのまばらな路地で、浩二は瑞希の顔を思い浮かべる。
彼女との結婚を望んでいるけど、それは自分の都合に巻き込むということ。
彼女と人生を共にしたいのだから、心を揺らしてボロを出すわけにはいかない。
真実に決して気付かれないように、心から大事にする。
そのためにどうすればいいか―――。
「美月……」
瑞希を美月と隙間なく重ねた時、握ったままだったスマホが震えた。
びくりと肩を震わせつつ画面を見ると、原田からの着信だった。
「おっせーよ!
どこまで弁当買いに出てんだよ、デパ地下まで行ってんのかよ!」
耳をつんざくような声に、浩二は思わずスマホを耳から遠ざける。
「ばーか、こんな時間に百貨店があいてるわけないだろ」
「そんなのわかってるよ、おせーから言ってんだろーが」
最初のコメントを投稿しよう!