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その瞬間、瑞希の望みは叶ったはずだった。
ずっと見返したいと思っていた半年が報われたはずだった。
なのに予期していなかった胸の苦しさに襲われて、優越に浸る前に和明の前から去ってしまった。
呼び止めようとする和明の声を背に、心配そうなミヤサカの顔と、抱きしめられた時のぬくもりがよぎる。
結婚に愛も恋も必要なくて、条件さえ合えばそれでいいと思っていた。
そうして付き合った彼は、思いのほか厄介な人で、勝手に心に踏み込んでくるし、頼んでもいないのに親身になってくれる。
瑞希は彼自身じゃなく、彼の外側だけがほしかった。
彼の優しさに触れるうちに、事実を伏せて交際を続けることが、後ろめたくなってしまった。
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