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ミヤサカになにか理由があることくらい、いくらなんでも察しがついていた。
その『なにか』を今なら話してくれるかもしれないと、戸惑いながらもかすかに期待した。
けど、ミヤサカは瑞希をいたわる言葉を口にしただけで、肝心なことはなにも言わない。
それでも落胆はしなかった。
誰にだって事情はあるし、わかり合うことを望まなかったんだから、それで構わないはずだった。
なのに、見えない壁を一枚挟んでいるような寂しさはなんだろう。
(だめだめ……)
瑞希はすぐにかぶりを振って、気持ちを無理やり切り替えた。
言いたいことは言ったし、相手だってそれで構わないと言うのだから、気にしちゃだめだ。
このまま交際を続ければミヤサカと結婚できるだろう。
余計なことにとらわれずに、早く楽になりたい。
「……今度こそ結婚するんだから」
瑞希はぽつりと呟くと、重い気持ちを押しやるように企画部のドアをあけた。
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