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「あの、これ……あの時のお礼なんですが」 「え、お礼とかいいよ」 浩二は慌てて首を横に振った。 だけどその女子社員は、「仕事の合間に食べていただけないかと思いまして」と、紙袋を浩二に近付ける。 (あー……) わざわざここまで来てくれているのに、受け取らないのは失礼かもしれない。 「あぁ……なんかごめん、わざわざありがとう」 浩二が紙袋を受け取ると、彼女は浩二をじっと見つめた。 「なに?」 どうかしたのかと怪訝な顔をした時、女子社員は「いいえ」とにっこり微笑んで言った。 「じゃ、お邪魔しました。頑張ってください」 彼女は頭を下げると、エレベーターホールへ踵を返した。 浩二は背中が見えなくなると、小さく息をついてオフィスに戻った。
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