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振り返ると、和明が壁にもたれかかって荒い息をしている。 「……大丈夫ですか」 さすがにこれはまずいかもしれない。 営業本部のだれかを呼んだほうがいいだろうか。 視線を彷徨わせた時、和明が言った。 「……悪いんだけど、トイレまで連れていって」 「えっ」 正直仕事以外で関わりたくない瑞希は、露骨に顔をしかめた。 だけど脂汗までかいている男を放置するのも気が引けて、仕方なくビジネスバッグを脇に置いた。 (なにでこんなことに……) 力の入らない大の男を、女が支えるのは容易じゃない。 瑞希は額に汗を滲ませながら和明に言った。
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