51/76

4687人が本棚に入れています
本棚に追加
/399ページ
「昨日飲みすぎたんですね」 そうと限らなくても、苛立ちから体調不良の理由を決めつけてやった。 しかしそれが本当に当たっていたようで、和明は顔を歪めて自嘲気味に言った。 「二日酔いの薬、朝飲んだんだけどな」 「そうですか。 まぁ、私は打ち合わせさえちゃんとしてもらえてたら、しんどかろうがどうでもいいですけど」 手洗いまであと数メートル。 やっと役目も終わりだと思った時、弱々しい声が聞こえた。 「……俺、もしかして、今の彼女に振られるかもしれないんだ」 「……は?」 「彼女に距離を置こうって、昨日言われた」 瑞希は無意識のうちに足を止めた。 なんだそれ。意味がわからない。 脂汗を浮かべた和明は、ひどく苦しそうな顔をでうつむいている。 嘘とは思えない雰囲気に、瑞希は唖然として和明の横顔を見つめた。
/399ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4687人が本棚に入れています
本棚に追加