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「じゃ、聞くけど。
絶対に朝9時までに間に合う自信がある?」
「それは……」
彼女は時計に目を向け、口ごもった。
「……わかりませんけど、データを消失させてしまったのは私だから……。
だれかに手伝ってもらうなんてできません」
自分に言い聞かせるように語尾を強くされ、浩二は内心嘆息した。
ひとりでひたすらなんとかしようとするのは、えらいとは思う。
けど、それは時と場合によっての話だ。
「そういったところを感心するけど、もし間に合わなかったら、瑞希さんだけの問題じゃなくなる。
それはわかってるんでしょ」
こんな説教じみた話は、彼女の傷に塩を塗り込むだけとわかっていた。
けど、痛いところをつかないと、彼女は頑なに自分を帰らせようとするし、このまま放っておけない。
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