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肩をすくめた浩二は、とりなすように笑った。
「大丈夫、きっと間に合うから。
さっさと終わらて帰ろう」
彼女の瞳は薄い水の膜を張っていて、ゆらゆらと揺れていた。
それからしばらくして、「……よろしくお願いします」と、細い声が聞こえた。
頭を下げた瑞希は、浩二を見ずにパソコンに向き直る。
きっと泣き顔を見られたくないのだろう。
しばらくして目の前の画面にメール通知が届いた。
「……それが集計のファイルです」
「わかった」
それから浩二たちは無言でキーボードを打った。
がらんとした寂しいオフィスに、無機質な音が響く。
窓の外がだんだん明るくなって、日が昇った頃、浩二のほうの集計が終わった。
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