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(え………)
浩二は逸る鼓動を抑えながら、メッセージボックスを開いた。
差出人の名前は『美月』だった。
『ミヤサカさんはSEなんですよね。
お仕事はとても忙しいんですか?』
浩二は少し驚いた。
まさか、自分のことを聞かれると思わなかったからだ。
けど考えてみれば、彼女のいう『メッセージのやりとり』とは、こうやって互いを知る行為のような気もした。
浩二はどう返事をしようか迷いながら、返信ボタンを押す。
『そうです、SEです。
仕事はそれなりに忙しいです』
起した文章を送信しかけて、ふと手を止める。
(これだと味気なさ過ぎるよな……)
考えた浩二は、相手のことも聞いてみることにした。
『美月さんは、どんなお仕事をされてるんですか?』
その一文を付け加えて、メッセージを送信した。
大きく息をついて、時計に目を向ける。
今日は少し早めに出て、どこかコーヒーショップに入ろうと思っていた。
浩二は今度こそベッドを抜け、出勤の支度を始めた。
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