4687人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「おーい、神崎!
お前宛てに来てた郵便、企画部に混じってたらしいぞ」
トイレだと出て行ったばかりの原田が、大声で神崎を呼んだ。
「え、まじで なんで?」
「なんでかはしらねーよ。 今企画部の女子がこれ持ってきた」
何気なくパソコン画面から顔を上げると、ふたりがドアの前で騒いでいる。
「え、女子?
まじかよー、それなら俺が直接受け取りたかったー」
「んだよそれ。
ラブレターじゃあるまいし
差出人、マルイ・コーポレートだぞ」
わいわいと盛り上がるふたりは、彼女いない歴、たしか二年だ。
情報システム部に女性社員はいないし、このフロアにほかに部署はない。
だから女に飢えているんだろうけど、手違いの郵便物にすら出会いを求める姿は、ちょっと哀れだ。
(いやいや そんなことより、仕事仕事……)
下世話な思考を振り払い、宮坂はもう一度プログラミングに集中した。
最初のコメントを投稿しよう!