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*** 「おーい、神崎!  お前宛てに来てた郵便、企画部に混じってたらしいぞ」 トイレだと出て行ったばかりの原田が、大声で神崎を呼んだ。 「え、まじで なんで?」 「なんでかはしらねーよ。 今企画部の女子がこれ持ってきた」 何気なくパソコン画面から顔を上げると、ふたりがドアの前で騒いでいる。 「え、女子?   まじかよー、それなら俺が直接受け取りたかったー」 「んだよそれ。  ラブレターじゃあるまいし  差出人、マルイ・コーポレートだぞ」 わいわいと盛り上がるふたりは、彼女いない歴、たしか二年だ。 情報システム部に女性社員はいないし、このフロアにほかに部署はない。 だから女に飢えているんだろうけど、手違いの郵便物にすら出会いを求める姿は、ちょっと哀れだ。 (いやいや そんなことより、仕事仕事……) 下世話な思考を振り払い、宮坂はもう一度プログラミングに集中した。
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