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コーヒーの香りをたくさん吸い込んで、気分を落ち着ける。 ふとした時に頭に浮かんでくるミヤサカだけど、彼ばっかり気にしていられない。 瑞希はフルールにある、ほかの相手からのメッセージを開いた。 近況の報告や、面会を希望するメッセージが並んでいる。 たいしたことのない内容はいつも変わらないのに、今日に限って、いつもの何倍もくだらなく思えてしまう。 (……なんでだろ) 気が乗らないまま返信し終えると、瑞希は窓の外に目を向けた。 5月らしいすがすがしい空が、眩しく感じる。 フルールに登録した日は、ここから見上げた空は、今にも雨が降り出しそうだった。 あの寒い冬から、もう半年経っている。 当初の予定では、もう結婚が決まっててもおかしくない時期だ。 瑞希は、勝手に頭に浮かんでくるミヤサカとの面会を、いい機会だと捉えることにした。
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