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磨りガラスを透過する淡いオレンジ色の灯り。中から、シャワーの水音が聞こえる。
「良かった」
寮生の誰かが大浴場に居ることが分かり、明るい気持ちになる。一瞬、中にいるのが“幽霊”だと思って身体が固まってしまった俺は自分の思考の馬鹿馬鹿しさに苦笑いした。先客を驚かせないようにしようと思いながら、カゴを床に置き、立て付けの悪いガラス扉の取っ手の窪みに手を掛けて、静かにドアをスライドした。
「――ッ?!」
ドアを三分の一ほど開けた俺は息を飲む。喉から、ひゅっ、と可笑しな音が鳴った。
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