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「先生、新作ありがとうございます! 初のミステリー物、早く読みたいのですぐに帰ります!」
若々しい担当クンが元気な声で玄関で頭を下げる。
「こらこら、君の仕事は読者に届けることだろ?」
「あ! し、失礼しました~」
前の担当さんから変わり、新人の担当クンになって一か月…どうやら私の作品のファンらしく会社の面接でもソレをアピールしまくって受かったらしい。
それとは別に担当クンから振りまかれる子犬属性はなんというか無邪気なテロリストのように私の胸を容赦なく締め付けてくる。
「まぁ、そんなに読みたかったら今度オフの日にでも来なさい。あまり深いとこまでは話せないし女子っぽくない部屋で良ければ…ね」
「え…」
「あ…」
しまった…ついにやってしまった。
彼とは歳も離れて、関係も出版社と筆者っていう間柄なのに調子に乗って超えてはいけない壁を…
ヤバイ。これが編集長さんや元担当さんにバレたら…
「はい! じゃあ、次のオフにお伺いします!」
担当クンは目を輝かせて部屋から出て行った。
「…っし!」
私は小さな声でガッツポーズをして、彼がいつ来てもいいように部屋の片づけを始めた。
幸いにも今日はさっきので仕事は終わったようなものだったから。
「いくら何でも気合入りすぎでしょ、私」
昼からの片づけは模様から掃除、服の整理、果ては換気扇の掃除までやっていた。時期が時期なら大晦日の大掃除、学校で言えば学期末の大清掃、社会人なら引っ越し前の片づけ… そんなレベルだった。
「まぁ、彼が来るってのが影響したのがいい結果になったかな?」
異性を呼んだことが無かったので、どうすればいいか分からず徹底的にやってしまった。
「あ! ちょうど、明日ゴミの日じゃん! 時間的にもちょうどいいし置いてこよ」
時刻は日が変わった0時付近、私はゴミ袋を持って外に出た…
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