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楽しそうに会話する早乙女や藤沼を横目に、ふと辺りを見渡す
例のあの方が見当たらない
「……神城ちゃんどしたの?」
「え、なにが……?」
「なにが?って、キョロキョロと挙動不審だったからさ」
少し周りを見回してただけなのに、人をそんな不審者みたいな言い方しなくてもいいだろう
「なんでもないよ……」
「そお〜?」
いつ居なくなったのか、全く気付かなかった。さっきまで意識して目を逸らしていた分、居なくなればそれはそれで心配だ
まさかでは無いが、俺ような男に頭を撫でられてショックを受けてたり…いやマジであるぞ。プライド高そうだし尚更
野見山にトイレに行くと声を掛け、そっと自室に戻っているのかと思ったが居なかった
「どこいったんだ……?」
広い室内とは言えど、人が隠れるような部屋があったかと言われたらあるが……あの人が引きこもりのように隠れているイメージなんて無いし
と、部屋の中をうろついていたら管理人さんと目が合った
「坊ちゃんをお探しで?」
「あ、いや……じゃなくて……はい。かい…橘さんを」
会長と言いたかったが管理人さんにそう言っても伝わらなかったらと思い、言葉を噛み噛みになるがそんな俺の挙動不審を変に思うことも無くニコリと微笑まれる
「……でしたら、例の場所かと」
「例の?」
「はい。小さい頃に見つけてから、落ち着きたいに行く場所があるんですよ」
そんな秘密基地みたいな所なんてあったかと、来てから少し周りを探索したが思い出せない
「……他の方々には内緒ですよ?」
「え、お……教えて貰えるんですか?」
管理人さんが小さなメモに何かを書き始め、それを再度見て2つ折りにし俺へと手渡してくれた
「……!ありがとうございます!」
メモの場所に向かおうとした瞬間、もう一度管理人さんへと会釈をすれば。俺に小さく手を振って見送ってくれるその姿に、俺も思わず手を振り目的地へと足を伸ばした
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