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~♪
初期設定の着メロがスマホから響く。
ベッドへ俯せになって読書に勤しんでいた私は、本に栞を挟んで枕元に置いた。そして躰を起こして充電スタンドにセットしておいたそれを手に取ると、電源ボタンを浅く押す。画面を点灯させるためだ。
「……ぇ、何、これ……」
私はそれを見て背筋が粟立った。
どうやら届いたのはメールだったようで、開いてみると送信者の欄に『miyu-10.n@xxxx.ne.jp』と記されている。メールアドレスが直接表示されるのは、アドレス帳に登録されていないからだ。その点では、ただ登録していないところからメールが届いた、だけで済むはずだった。しかし、このアドレスに表記されている『ミユ』という名前。
――『美優』は私の名前だ。
更に、私の苗字は『永東』なので、10の後のnとも一致する。10が何のことだかは分からないが……。
私はそれが原因で悪寒を覚えた。
しかし、偶然と云われればそれまでだ。私は意を決して本文を開く。
『十年後の私へ』冒頭にはこれが書いてあった。
スマホを持つ手が震える。そんな、まさか、そんな非科学的なことが。
動揺のあまり揺れる焦点を必死に固定して続きを読む。唾を嚥下した。
『元気ですか? 私は十年後の貴女です。私は貴女に忠告をするためにメールを送りました』
其処まで読み進めて、咄嗟に声が洩れる。
「え? 忠告……?」
自慢ではないが、私は同年代の子に比べて、素行が良い方だと思う。忠告されるような心当たりはないが……これから十年の間に性格が変わってしまうのだろうか。
いやいや、待てよ。そもそも、なんで私はこんな胡散臭いものを信じて怖がっているんだ。イタズラメールの可能性だってあるじゃないか。
『貴女のことだから、今更になってメールに不信感を抱いていることでしょう。それを覆すためにこれから私が本人である証拠を言います』
「ば、バレてる……」
でも、まだ確証がない。これが出任せで、この後に引っ掛かった私を馬鹿にするような文面が続いている可能性もあるだろう。
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