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夜が更けてローレルハーストの家々の灯りが増えて闇の中に美しく煌めいていた。大学はぼんやりとした灯りを空に向かって発していた。
「ブライス,温かいな」
「これからすることを考えると,体温上がる」
「えっ?」
ブライスの胸から身体を離し,相手の顔を見ようとして身体をひねると,薄闇の中でも分かる笑顔のブライスに顎を捕らえられた。
「今日,日本語も勉強したんだ」
「へっ?」
「イタダキマス」
ブライスが最初から深く唇を合わせ舌を優志の口中深く差し入れ,あらゆる場所を味わっては吸い付いた。それから優志の行き場を決めかねていた舌をきつく絡め取った。
「んん…んっ」
呼吸が苦しくなった優志が呻いた。そっと舌と唇を離したブライスの唇がそのまま優志の耳に辿り着いた。
「ゴチソウサマデシタ」
未だ呼吸が整わない優志は,呼吸の合間に漏らした。
「それ…使う場面…間違ってる…」
「そんな気がしてた。これはどうかな?
アイシテル,優志」
―あ,もうだめだ,蕩ける…
優志はブライスの脚の間で横向きになり,上半身を預けてキスの続きをせがんだ。
ふたりが唇を離したとき,どちらも身体が反応していたが,何とか理性を保ってそれ以上の行為は留めた。
「ボートをひっくり返したくないしな」
冷静につぶやく恋人に,優志はその場面を想像してしまって更に身体を熱くした。
再びブライスの脚の間で背中を預けながら,優志は空を見て気持ちを落ち着けようとした。雲がかかっていて晴れ間に少し星が見える。
「ブライス,学部を終えたら大学院はワシントン大に移るって,実現できるの?」
「あっちにもこっちにも,宇宙工学の権威はいないんだ。でも俺はワシントン大で宇宙工学を育てたいね。どこか特定の大学だけで研究しているだけでは,結果的にこの分野の発展は失速する。あちこち離れた場所で切磋琢磨しないといけない。ワシントン大もその一つにしたいんだ」
「分かるよ。日本も宇宙工学を手がける大学と企業は限られていて,もどかしい思いがする。俺の大学は,ワシントン大と提携することで今の状態を変える突破口にしたいんだと思うよ」
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