第4章 約束

39/54
前へ
/116ページ
次へ
 数分の後,少し青ざめた顔の優志にタオルを巻いて,ブライスは彼をベッドへと誘った。ベッドの上に優志の身体を横たえ,優しく抱きしめたが,何の反応も無かった。頬と頬を合わせ,身体の緊張を解きほぐすように腕をそっとさすり続けた。  ほぉーっと優志の口から溜息が零れた。ブライスは優志の額の髪の毛を押し上げて,そこにそっと温かいキスをした。  「愛してる,優志,とっても」  優志の顔がほんのり上気して,体温が戻ってきたことを伝えていた。さっきまで閉じられていた瞼が,うっすらと開かれた。睫毛が水滴で繋がって,いつもより翳りが濃く見えた。 「…ブライス…俺の腹,さすってほしいんだけど…」 優しく微笑んで頷いたブライスは,腕をさすっていた手を優志の腹部を覆っているタオルの上に移動させた。そして脇の合わせ目から手を入れて直接柔らかな皮膚に触れた。前に触ったときよりも張りが足りないようで,頼りなげな感じがした。ブライスは手の平で押さえつけないように気を付けて,触れるだけでゆっくりと円を描いた。 優志は満足そうな表情で目を瞑った。 「は…気持ちいい…」 「そうか,しばらくこうしているから」 「手が温かいな… …小さい頃に腹が痛くなると,母がこうしてさすってくれたっけ…」  目を瞑りながら優志の顔に微笑みが 浮かんだ。ブライスはたまらなくなって微笑みを作っている部分にキスをした。目元に,柔らかく盛り上がった頬に,その頬を押し上げている口元に。 優志の微笑みが穏やかに広がった。ブライスの唇が離れたとき,優志はひと言ひと言を噛みしめるように言った。 「…俺も,ブライスのこと,愛してる」  そうして両手でブライスの頬を挟んで自分の顔に引き寄せた。開いた目が潤んでいる。 「…もう,腹はいい…」 ブライスの頬に手を添えたままの優志を,ブライスが優しく抱きしめた。 それから,長いキスを交わした。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

284人が本棚に入れています
本棚に追加