第4章 約束

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ほんの少し前にバスルームで過ごした時間は,今の甘い時間とはかけ離れた, 気詰まりな時間だった。それをふたりで一緒に乗り越えた。今はふたりの間により強い絆が存在しているように感じられた。 だからお互いがしたいことを相手にしても,絶対に受け入れられる気がした。   キスをするふたりには躊躇いが全く無かった。 「…ふ…ぅ…ブライス,喉が渇いた…」 「水でいい?…ここにあるんだ」  ナイトテーブルからミネラルウォーターのペットボトルを取り上げ,キャップを開けながら,ブライスはふとその手を止めた。 「…一度やってみたかったんだけど,口移ししていいか?」  少し驚いたが,拒否するよりも早く水が飲みたい気持ちが勝って優志は頷いた。   口に少し水を含んで横たわる優志に口移しする。僅かな量だから楽に飲み込める。断らなくて良かったな,と優志は思った。 3回目の口移しのあと,ブライスの唇は次に辿るべき道筋を覚えているかのように,その先の窪みに,突起に,なだらかな張りに舌を這わせ,優志を震わせながら進んだ。  柔らかな皮膚を口中まで吸い,骨張った箇所に舌を押しつけ,舌を跳ね返す筋肉には歯をたてた。優志の呼吸は激しさを増すばかりだ。  やがていちばん湿り気のある愛おしい一帯で,さらに潤いを増しているところに近づくと,ブライスの唇は当然の権利とばかりにそれを中に収め,艶めかしい動きをする舌と共に愛撫を加えた。初めてではないのだから,いやそれよりもふたりで結婚式を挙げた夜だから,できることを全て相手に与えた。優志の快感の喘ぎは休むことがなく,熱を吐き出すまでブライスの耳奥を刺激した。  優志の荒い呼吸が徐々に治まりつつあった。瞑っていた目を半開きにするとブライスの顔がすぐ近くに見えた。 「ごめん,言わずにはいられない…。 …今の優志,壮絶に綺麗だよ…」 -綺麗なのはブライスの方だ… そう言いたかったのに唇が思ったように開いてくれなかった。代わりに,はぁっ,と息が漏れただけだった。想いを伝えたくてブライスを見上げると,薄明かりの下なのに瞳が興奮に揺らめいているのがわかった。優志は,知らず自分の弛緩したものの根本がきゅっと縮まるのを感じた。 ―すごく興奮してる…?
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