第4章 約束

45/54
前へ
/116ページ
次へ
 セアラとエリンが庭の片隅でボウの相手をしていた。ブライスが優志に目配せして,ふたりに近づいた。 「セアラ,俺たち,君に感謝したいんだ。ジェニファーのことと,それから…」 「先週の土曜日のこと」  優志が声を低くして言葉を継いだ。 「ありがとう。本当に感謝してる」 「ふふ,良かった。ブライスはユウシといるととっても幸せそうに見えるよ」 「えっ? そうかな…。 そうだね,とても幸せだ」  ブライスは素直に認めて笑った。優志がエリンに話しかけた。 「エリン,君は僕たちにブルーベリーの花言葉を教えてくれたね。とても役立ったんだ,ありがとう」 エリンの顔がぱぁっと明るくなった。 「どういたしまして。ユウシ,次にシアトルに来たら,自家製ブルーベリージャムをごちそうするわ」 「優志,俺そろそろジョーンズさん家に戻るよ」 「あ,あぁそうだな」  遼が優志に近寄ってきた。それを聞きつけたブライスがボウを呼んだ。 「優志,最後にボウの散歩に行かないか」 「…ブライス,いいのか?」 「ユウシ,ボウも喜ぶから,よかったらふたりで散歩に連れて行ってちょうだい」  ジェーンが顔を向けた方を見ると,ついさっきまで元気だったエリンが,今はガーデンチェアでうとうとしていた。 「はい,じゃあ。最後の散歩に行ってきます」  遼はアセナの車で一足先に戻り,優志はブライスと一緒にボウを連れ出した。  ふたりは言葉少なに歩いた。ボウはさっき庭を十分に駆け回っていたので,さほど運動を必要としていなかった。ジェーンは気を遣ってくれたのだ。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

284人が本棚に入れています
本棚に追加