第2章 湖水

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優志はハーレー家に戻りシャワーを浴びて軽く朝食を摂った。ジェーンはバーベキューが行われるウィリアムズ家に持ってく肉料理とパウンドケーキのようなものを焼いていた。長女のセアラはリビングで踊っていた。13歳でまだ小柄だが,メークと髪型それに服装はアリアナ・グランデを真似ていた。優志には違和感があったが,両親は彼女の個性を尊重しているように見えた。  11時10分前に,家の前で軽くクラクションが鳴らされ,玄関のドアをノックする音が聞こえた。ドアを開けたのは遼だった。優志は荷物を持ち,ハーレー家の人たちに先に行くことを告げて外に出た。 運転席からブライスが降りてきたのが見えた。サンド・カラーの柔らかな髪の毛はほぼオールバック状に後方に撫でつけられ,白いTシャツに黒いサングラスがよく似合っていた。似合いすぎてモデルみたいだと優志は思った。ブライスはサングラスを外すと,目を細めて嬉しそうに優志を見た。それからゆったりとした口調で話しかけてきた。 「おはよう,ユウシ。母を紹介するよ」 助手席から白髪の上品な女性が降りてきていて,優志に微笑んでいた。慈愛に満ちた表情をしていた。 「初めまして,ユウシ。アセナ・ショーンズよ。会えて嬉しいわ。昨日,ブライスが貴方のことをたくさん教えてくれたのよ」  英国風のアクセントで話しながらユウシの手を握り,頬を寄せてきた。こんな正式なあいさつを受けるとは思っていなかったので,優志は少し身体を強張らせてしまった。するとブライスがくくっと笑って,ジョーンズ夫人の腕を取り,やんわりと優志から引き離した。 「お母さん,ユウシはそういうのに慣れていないから固まってるよ」 「あら,ごめんなさいね」  全然悪いとは思っていない風に微笑んで,彼女は助手席に戻った。優志は遼と後部座席に乗った。 「アメリカの本場のバーベキューだ,わくわくするな!」 「遼,どんだけお子ちゃまなんだよ…」
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