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二人は空腹を覚えて陸へと向かい,他の大学生と合流して程よく焼けた肉を再び味わうことにした。優志はソーセージを見つけてにやりと笑った。
「ブライス,ほらこのソーセージがうまそうだ!」
ブライスはソーセージを見てちょっと首を傾げ,すぐに皮肉っぽく言い返した。
「ユウシ,君は俺に豚肉を勧めるのか?」
「当然だ!うまいソーセージを食べなきゃ後悔するよ!」
優志は目を輝かせて言った。ブライスはその様子に自然と笑い声が出た。笑いは止まらずとうとう大声で笑いこけた。優志の言動がありがたかった。こんな何気ない言葉に飢えてたんだ…と胸の中がじんわりと温かくなるのを感じた。
適当な場所を見つけて食べていると,麻衣子のホストマザーを皮切りに何人かのアメリカ人が優志に話しかけてきた。優志がかなり英語を話すと分かると,若者や子供たちも興味深そうに話しかけてきた。
「優志は英語ができるからいいなぁ。俺もジェニファーと話せたらなぁ」
遼が羨ましそうに言ったのに,ブライスが冷やかすように訊いた。
「リョウは彼女が好みなのか」
「ああ,美人じゃないか。優志だってそう思うだろ」
「う~ん,美人だけど俺はちょっと苦手かな。俺はどっちかって言うと…」
ブライスが無言で優志を見た。優志は自分の女性のタイプは…と考えてはみたが,何も思いつかなくて仕方なく視線を湖に向けてみた。視界の右側にウィンドサーフィンをする男性が目に入った。ドクター・ハーレーだった。家から道具を持ってきたらしい。
「いいなぁ。俺はウィンドサーフィンをやってみたいよ」
「やったこと無いのか」
ブライスもドクター・ハーレーを見ながら言った。
「無い…。サーフィンも無いけど,何だかウィンドサーフィンの方が楽しめそうに思う」
「…ちょっと待ってて」
ブライスはおもむろに立ち上がり,周囲を見回してそれからジェニファーのところに行った。ブライスから話しかけられて,ジェニファーは美しく微笑んで頷いたり家を振り返って何かを指さしたりした。彼らを見ていた優志は,また視線を湖に戻してドクター・ハーレーの操作ぶりを眺めた。
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