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ブライスが優志たちの方に向かってきながら叫んだ。
「リョウ,ユウシ!手伝って欲しいことがある!」
唐突な言葉に二人は顔を見合わせ,行き先を変えたブライスを慌てて追った。
ウィリアムズ家の車庫の延長のような場所に様々な道具類が置かれたスペースがあった。ブライスはそこを物色して目当ての物を見つけて取り出した。ウィンドサーフィンの道具のようだった。優志たちに指示を出していくつかのパーツを分けて持たせると笑顔で言った。
「これからウィンドサーフィンのレッスンだ。初めてだから操作しやすいジュニア用でやってみよう」
「やった!ブライス,よろしくお願いします」
「…お,俺もやるの?」
腰が引けている遼にブライスが,当然だろ,と言わんばかりに眉を上げて微笑んだ。
ブライスは二人に道具の組み立て方と,砂地での基本的な動作を教えた。それから浅瀬に入りブライが二人に手取り足取りレッスンを施した。交互にボードに乗って練習していた二人は,2時間ほどで10メートルくらい進めるようになった。二人ともブームを持ってボードに立つ姿はかなりへっぴり腰だし,風向きや風力がちょっと変わるとバランスを崩してしまうが,一日目にしては上出来だ,とブライスが褒めた。
優志はプレーニングという,水面を自在にセイリングする段階までマスターしたいと思った。ブライスが教えてくれるならば…。しかし練習には場所と道具が必要になるし,シアトルに滞在している期間のしかも片手間でマスターできるようなことではないと理解していた。ブライスの手間を考えると,とても言い出せる望みではなかった。
日が傾いてボードを引き上げた頃には,バーベキューはお開きとなっていた。ジョーンズ夫人も他の家族と共に帰った後だった。3人はウィリアムズ家の面々に遅くなったことを詫び,一日過ごさせてもらったことに対して感謝を伝えた。ブライスがジョーンズ夫妻に言葉を続けた。それは,翌日以降も3人がウィンドサーフィンの練習をすることを許可して欲しいという希望だった。夫妻は快く許可してくれた。優志も嬉しくて何度も感謝した。
ブライスは,俺の気持ちが分かってたみたいだ…
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